節税


エジプトの旅、その3(現代の街編)

 飛行機11月に母と2人で行った、エジプトの旅のお話。(続きです) 巨大な遺跡に負けず、現代の街も魅力的で不思議な物がいっぱいでした。 まず、街を歩いていて気になったのが、建築中の家が多いこと。 写真左のように、建物の屋上に鉄筋がむき出しになった家が多いです。 建築途中なのかな? でも、家の人は普通に住んでるみたいだし… 見渡す限り建築中の家が並んでいる地区もいっぱいあるし… なんとこれ、税金対策だそうですあせあせ 完成していない家には、税金がかからないから、わざと鉄筋を残しているのだとか。 もちろん、将来的に増築する場合もあるそうですが… 雨が少ないエジプトだからこその節税です晴れ (雨の多い日本では考えられない荒業ですね) 写真中央はアスワンに近い街。(写真中央) 岩山と斜面に並ぶ白い壁の家。 青い窓がオシャレです。 壁画のある家もたくさんあります。(写真右) リゾート壁に描かれた船の絵は、この家のご主人が船でメッカに巡礼に行ったという意味だそうです。 飛行機飛行機の絵が描いてある場合は、飛行機で行ったということらしい… アパートの屋上に、不思議な塔が… 写真 写真 これは鳩小屋なのですひよこ もちろん、鳩、食べるそうですレストラン 市場でも生きた鳩がたくさん売られていました。 焼かれた鳩…私も食べました。(共食いですね…げっそり) スパイシーで美味しかったです。 カイロの街では、ロバも現役でがんばっていました。 写真 バスに乗っていて、羊の群れに取り囲まれることも!!! 写真 電車 カイロからアレクサンドリアまで電車にも乗りました。 カイロのラムセス駅。 写真 電車の中はこんな感じです。 写真 切符…何が書いてあるのかわかりません。 写真 アレキサンドリアは、終点なので安心でしたが、 駅名の看板はアラビア語オンリーの表示なので、駅名が全くわかりませんあせあせ ここは何処? 写真 アレキサンドリアの市場。 活気にあふれています。 写真 ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい) カイロのエジプト考古学博物館も見学しました。 写真 ツタンカーメンの秘宝も見ましたよ目 中の写真撮影は禁止なので、図録とポストカードです。 写真 ツタンカーメンの「黄金のマスク」や「黄金の棺」豪華な副葬品の数々に圧倒されますぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい) 母は1965年に京都の美術館に「ツタンカーメン展」を見に行ったので、 「黄金のマスクを見るのは、これで2回目なのよ」と自慢していました。 写真左の金色の表紙の本は、44年前に母が京都で購入した「ツタンカーメン展」の図録です。
西畑修の過ち
 「西畑くん。君はうちに来て何年になる?」  「えっと。もうすぐ丸5年です」  「そうか。もうそんなに経つのか」  先生はそう言うと、わざとらしく何度かうんうんと頷き始めた。僕は机に視線を戻すと、計算途中の数字を追いかける。急がねば今日中に終わりそうもない。  「西畑くんは確か、将来は政治家を目指してるんだったよね」  先生の話はどうもまだ続いているようだ。少しくらいこっちの身にもなってもらいたいところだが、僕はそんなことを言える立場にない。  「はい。そうです。先生みたいな政治家を目指しています」答えながら5年前を思い出した。先生がまだあの言葉を覚えていたことに驚いた。と同時に、うれしさを押し殺している自分がいることに気が付く。  5年前。僕は知人のつてで大森たかお参議院議員の事務所を訪れた。大森議員が私設秘書を募集していると聞きつけたからだ。  僕の面接を担当してくれたのは黒木という秘書だった。大森たかおの秘書時代を知っているらしい。20年前の話をさもうれしそうに話してくる。本人からすれば、それだけ大森議員とは深い関係なのだということをアピールしているつもりなのだろう。僕は適当に相槌を打っていた。  僕の面接は30分ほどで終わった。早速明日から来てくれとのことだった。念のために事情を確認すると、黒木からは予想通りの答えが返ってきた。何でも先月、主に会計を担当していた秘書が急に辞めたからとのことだ。知人から事前にその情報を得ていた僕は、それは大変ですねと黒木の話に合わせた。  僕が即大森議員の私設秘書として採用されたのには理由があった。  それは、僕が公認会計士の資格を有しているからだ。  それ以上に、僕の知人がこの黒木と親しい関係にあったことが何よりも大きい。  僕は黒木を紹介してもらえる見返りに、知人に数十万の現金を渡している。  その知人がお金に困っていることを承知していたからだ。  知人は少し躊躇っていたが、このことは黒木には内緒にしておいてくれと言いながら、結局はお金を受け取った。僕も当然そのことを言うつもりは毛頭にもない。  なぜならば、政治家の秘書というものはそう簡単になれるものではないからだ。  なんと言ってもコネが物を言う。紹介してもらうだけでも僕はありがたかった。  大森たかおは俗に言う2世議員だ。親の地盤をそのまま受け継いでいる。  所属している政党は小さなものだが、戦前は大派閥で連立与党も組んでいたこともあるとのことだ。そして今でも野党の第一党である。  その歴史に恩恵を受けいることは顕著に現れており、大森たかおの地盤は磐石なものであった。民営化や民間活力導入の新自由主義的改革への煽りで衰退しつつあるとはいえ、労働組合をバックに持っていることも大きい。  だけど僕にはそんな大森たかおの権力なんかは別にどうでもよく、政治家への道が開けていくことが重要であった。  黒木との面談を終えて帰ろうとした時だった。  黒木はまだ自分の自慢話をしたかったようだが、これから毎日聞くことになる僕は早々と撤退することに決めた。  席を立ち、事務所の玄関に歩み寄ったところ、いきなり玄関の戸が開き、外から人が入ってきた。  その男の顔を見て僕は少しだけ面食らった。なぜならその男が大森たかおだったからだ。軽く挨拶をしてみたが、大森たかおは怪訝な表情で僕を見つめたままだ。黒木が慌てて大森たかおのそばに近づき、僕のことを大森たかおに説明をする。大森たかおはあまり表情を変えずに黒木の話を聞いていた。  「なるほど。新しい事務員だな」大森たかおの表情は変わらなかった。  「はい。先生。明日から早速仕事に入ってもらいます」ペコペコしながら黒木は大森たかおに話しかけている。僕は瞬時にこれがいつもの2人のあるべき姿なんだろうなと推測する。  僕がジッと2人のやり取りを窺っていると、大森たかおが僕に尋ねてきた。  「ちなみに君は、何でこの仕事をやろうと思ったんだね?」  大森たかおの表情は変わらない。感情がないのだろうかと疑問に思った。そう思いつつも、僕は用意していた答えを口に出す。いつか似たようなことを聞かれるんじゃないかと思っていたからだ。  「はい。将来は大森先生のような政治家になりたいと思っているからです」  僕はあえて抑揚することなく淡々と口走る。  大森たかおの表情は最後までほとんど変化がなかった。  その言葉がまさかここで出てくるとは思わなかった。先生はまた頷くと、そうかと一言口走った。顔が綻んでいる。口元には若干の笑みを浮かべている。  「先生。それが何か?」僕は先生の先を促した。  「実はだな。一つ君に相談があるのだが」先生は笑みを残したままだ。顔の筋肉の動かし方を熟知しているのは政治家の特異体質なのだろうと思う。    「はい。何でしょう」僕は覚悟した。相談とは名ばかりで通達だからだ。  「ちょっと君に出向してもらいたくてね」  「出向ですか?」思わず首を捻る。予想もしていない言葉に僕は驚いた。  「そうなんだ。山下さんのところなんだがね、そこの経理を手伝ってやって欲しいんだ」  「はぁ。経理ですか」僕は顎を指先で摩りながら事情を伺った。  先生の話はこうだった。  先生が親しくしている知り合いに会社を幾つか経営している社長がいる。  名前は山下寛治。僕は面識はないのだがよく知っている人物だ。なぜなら毎年献金を受けている会社だからだ。その記録を僕が管理している。  その会社の経理をやってくれないかとのことだが断る理由がない。いや、断われない理由が僕にはあるのだ。    「はい。分かりました。こっちの仕事はどうしますか?」  「うん。それなんだがね、しばらくは掛け持ちでお願いするよ」  「掛け持ちですか?」  「心配しなくても、こっちの仕事の実務からは全てはずそう。君は監査役として残ってくれたまえ」先生は終始同じ表情で話していた。目じりと口元の皺は元からあるものではないかと勘違いをしてしまいそうになる。  その日の夜、先生は山下社長を紹介してくれた。場所はY市内にある高級中華料理店だ。先月にオープンしたばかりの店らしい。オーナーは山下氏だ。  挨拶もそこそこに打ち合わせが始まった。料理が運ばれてくる気配がない。どうやら最初から僕を交えて仕事の話がしたかったようだ。山下氏は最初から厳しい表情のままで、全く気を緩める気配がなかった。  「先生。やはりこのパターンがいいでしょう」山下氏は鞄から書類を取り出し、先生に見せながら説明を始めた。  先生は真顔で書類を眺めている。僕もそっと横から窺う。どうやら書類の内容は献金に関することのようだ。なんとなく先が読めてきた。  山下氏の話は今後の献金方法に関してだった。今までの山下コーポレーションからではなく、関連会社のダイショーという会社から行うとのことだ。山下氏の説明では、どうやらこの会社を脱税で使っているようだ。節税の効果も勿論あるのだろう。  なるほど。どうやら山下氏は脱税で色々と策を講じているようだ。それで僕に声が掛かったんだなと確信する。  しかし本題はここからだった。話を聞いてさすがの僕もたじろいだ。なぜなら、ボランティア活動を通じてお金を集め、そこから政治献金も捻出するという話だったからだ。  これだと先生にも足がつくのではないか。咄嗟に思ったのだが、既に逃げ道は用意しているようだ。先生は事前に話を聞いているのか、山下氏の話を穏やかに聞いている。  「最悪の場合は切れ捨てますから」山下氏は軽い口調で言葉を吐き捨てた。  「まぁ、私としては献金の額がこれまでより二倍になるので、特に問題はありません」先生は涼しい顔をしている。献金の額で手を打ったということか。僕は少しだけ驚いたが、すぐに平静を取り戻す。金と政治はセットなのだ。いくらあってもお金はあるにこしたことはない。    「それにしても山下さんにはいつも感心させられますよ。さすがはやり手の実業家だ。お金の動かし方にも長けていらっしゃる」  「先生だって存分に税金を掠めてるんだ。私だって一般市民から搾取しても構わないでしょうに」  「所詮世の中なんてものは、上に立つ人間だけで何事も決まるんだ。愚民には分からないでしょうがね」  「そうでしょうな。何も感じずに一生懸命働いている。自ら知ろうという努力を怠っているわけですよ。自業自得ってやつですな」  少なくともどの国会議員もこの手の会話は行っている。僕も異論はない。僕も上に立たなければならない。法律を作る側に回らなければならないのだ。その思いが今の僕を突き動かしているし、生きていく使命となっている。  たまに葛藤もあったが、今では政治家になるにはしょうがないと割り切っている。  二人の会話を聞きながら僕はぼんやりと昔のことを思い出していた。  公認会計士の国家試験に合格した僕は、やっと自分の人生がこれから始まるのだと感じていた。  何よりも先ず、ここまで僕を親代わりに育ててくれた兄貴に感謝をしなくてはならない。  僕より4つ上の兄は高校を出るなり働きに出た。毎日朝から晩まで主に工事現場で肉体労働に勤しみ、当時まだ中学生だった僕の面倒をみてくれたのだ。    両親が事故で亡くなったのは3年前だった。それまでの生活とその後の生活はまるで天国と地獄といった変わり様だった。少しばかりのお金は親戚に援助してもらったのだが、あまり周りに頼りたくないと思っていた兄貴は両親が亡くなった1週間後にはアルバイトを始めていた。  「おまえは俺と違って頭がいいからさ。絶対に大学まで行くべきなんだって」  兄貴の口癖だった。僕は兄貴のこの言葉を励みに勉強に没頭した。そしていつしか兄貴に恩返しをしようと思ったのだ。そのためにも安定した収入のある仕事に就くのが僕の目標だった。その結果選んだ道が公認会計士というわけだ。  しかし突然状況が変わった。兄貴が病気で入院したのだ。働き詰めだった体が悲鳴でも上げたのかと思い、心配をしながら僕は病院へ駆けつけた。  兄貴の病名は血友病と呼ばれるものだった。血液の病気だ。聞いたことのない病名なので不安になったが、治療法はあるとのことだ。なんでも、欠損している血液凝固因子を体内に注入する補充療法で治療をするらしい。治療さえ続けていれば普通の生活は出来るとの事だ。僕はとりあえず安心した。  「迷惑をかけてすまないな」  「何を言ってるんだよ、兄貴。今まで僕はずっと兄貴に迷惑をかけっぱなしだったじゃないか」  「俺はダメな兄貴だ。おまえを大学にも行かせられなかった」  「僕は専門学校に行けただけで十分なんだって。お陰で公認会計士の資格も取れた訳だし」  「その公認何とかってやつの試験は難しいんだろ?国家試験なんだってなぁ。すげぇよ。やっぱり修は俺なんかと違って頭がいいんだ。自慢の弟だよ」  「これも全て兄貴のお陰なんだって。ずっと働いて生活費を稼いでくれたからだよ。だから病気の時くらいはさ、ゆっくり休んでて」  僕は結局大学には進学しなかったのだ。  育英金を活用すれば進学出来ないこともなかったが、4年間も更に兄貴に頼りっぱなしなることに我慢が出来なかったのだ。そのため僕は最短ルートを選び、公認会計士の国家資格を取った。それでも2年間通った専門学校の学費は全て兄貴が負担してくれていた。    「そうそうゆっくりもしてられないよ。今度はおまえに負けないように俺も頑張らなくちゃならないからな」兄貴はベットの中から右手を出し、僕を指差した。  その瞬間、僕は逆に兄貴の右腕を指差していた。「なにこれ?」  「えっ?」兄貴は咄嗟に右手を捻ると凝視した。眉間の皺を崩す「ああ。これが病気を教えてくれたんだよ」    兄貴が血友病の症状について簡単に説明を始めた。  血友病は、血液を固める凝固因子の一部の因子活性が低いか無いため、止血するのに時間がかかる障害だとのことだ。  そのため、わずかな出血で健常者なら自然に止血できる場合でも、止血困難な体質のために大きな血腫になることもある。兄貴の右腕にあるアザがその血腫なわけだ。  「1週間前の仕事中に軽い怪我をしたんだよ。傷はすぐに治ったけどアザが治らなくてさ。ひどい内出血でもしてるんじゃないかと思って病院に来たんだ。検査したらこうなったわけなんだよな」兄貴は小さく両手を広げておどけた表情を浮かべた。  「入院はどのくらい?」  「わかんない。色々まだ検査をするらしい」  「そうなんだ。それじゃ毎日見舞いにくるよ」  「いいのか?」  「うん。手に職は持ったも同じだ。いつでも仕事は探せるから」僕は兄貴の着替えを用意してくると言い残し、一度自宅へと戻った。  結局兄貴は3日で退院をした。すぐに仕事にも復帰した。だが病気が完治したわけではないので、しばらくは通院して補充療法を受けなければならない。出血するようなひどいケガなんてそうそうすることもないが、予防と治療で通院することになったのだ。時間が合うときは、僕も兄貴の付き添いで病院まで行くこともあった。  兄貴が通院をし始めてから2ヶ月ほどが経った頃だった。  貧しくもとりあえずは平凡な日常を取り戻したはずだった。両親の死後、貧困を極めた生活からは脱却していたし、何とか食べていける生活力は確保出来ていた。  それは全て兄貴の努力の賜物だった。  外から家に帰ると、その日の兄貴はひどくくたびれた表情をしていた。もしかして血友病の症状が悪化でもしたのではないかと勘ぐった僕は、すぐさま兄貴に質問を投げた。どこか具合が悪いのかという僕の問いかけに兄貴は反応しない。息をしているのかも心配になるほど弱々しく呼吸をしている。何度か声をかけてみるものの、依然として兄貴の顔には失望が溢れ出ている。  「どうしたんだよ、兄貴。何があったんだよ」僕は兄貴の肩を激しくゆすった。  今までにこんな顔をした兄貴を見たことがない。いつも笑顔で苦労を感じさせず、日夜僕のために働いてくれたあの頃の兄貴の面影は一切ないのだ。  兄貴と目を合わせてみるが、兄貴の目の焦点は定まっていない。まるで死人のようだ。精気もない。ふと横に視線を移すと病院名の書かれた袋が床の上に置いてあった。  僕はそっとその袋を持ち上げ中を確認する。  その瞬間、兄貴が僕を一瞥したようにも見えたが僕の行動を制してくることはなかった。  血友病は危険な病気じゃなかったはずだ。  前に聞いた医者の言葉が僕の脳で再現される。繰り返し再現される。医者の言葉が何度もリフレインしている。  袋の中には一枚の診断書のコピーが入っていた。僕は一瞬で用紙の隅々まで目を這わせる。ある単語が目に留まったところで僕は固まった。  「HIV?」思わず口に出た。ニュースなんかで聞いたことのある英語の頭文字だ。咄嗟には日本語が出てこない。いや、僕の本能が思い出させないようにしているのかもしれない。僕はそのまましばらく固まっていた。  「薬害エイズって言うらしい」  僕はビクッとして、ハッと横に顔を向ける。兄貴が薄笑いを浮かべていた。その表情に僕はゾッとした。  「薬害エイズ?エイズってまさか、兄貴が!?」聞き返しながら僕の全身からは血の気が引いた。一気に心が絶望感に支配される。兄貴は死ぬというのか!?どういうことなんだ!?僕の脳裏では、まだ医者の声がリフレインしている。 →西畑修の過ち 2